リベラルの街、バークレーで日本のウイスキーに出会う
Telegraph Avenueから滲み出るリベラルの香り
晴天のカリフォルニアの空が眩しい朝、「Telegraph Avenueに行こう。」と友人がバークレーの街を案内してくれた。大学が近いこともあり、バークレーには書店がいくつかある。この通りはカラフルなグラフィティが建物を染めていて、ヒッピー文化の栄えた、楽しく散歩できる場所である。そのうち、現地で有名な書店に足を運んだ。新品の本だけでなく、中古の本や、部屋に飾るポスターが豊富に取り揃えてあった。例えば、日本の古い怪獣映画の予告ポスターや、ヒーローもののポスターなどの極めてニッチなものが中古で売られていた。日本では書店の出入り口付近に取り揃えてある話題の本のコーナーを眺めると、その街のトレンドが垣間見える。このことはバークレーの書店でも同じだ。例えばマイノリティに関わる社会問題に対する批判や、大麻の育て方のガイドだったりと、リベラルな雰囲気のセレクションだった。
本屋のセレクションから見て取れるように、現地のUC Berkeleyの学生も活動的だ。目にみえる例としては、Telegraph Avenueの近くの大学の公園”People’s Park”の例がある。バークレーのダウンタウンに車を止めた時に、積み重なるカラフルなコンテナで閉じられた、謎の敷地を目にした。その「壁」は鉄のコンテナ2つ分と、とても高く、人が登れる高さではない。一体中に何があるのか。実はここでは、最近、大学がPeople’s Parkという歴史のある公園を取り壊して、学生寮を立てる計画が発表されたらしい。その直後、学生が反対運動を始め、大学当局と警察との激しい衝突が起きたという。学生はコンテナなどのバリケードを破壊しようと試み、警察はそれを取り締まろうとして7人が逮捕される事例が起きたそうだ。多様な意見が存在する街、それがバークレーのようだ。
College Avenueで試飲した日本のウイスキー
”Free whiskey tasting: Hakata” 街角を歩く中、バークレーの酒屋の手書きの看板に目を奪われた。 わざわざ日本から来ているので、日本のウイスキーを飲む必要もないと思ったが、興味本位に足を運んでみた。College AvenueにあるCaskというおしゃれな酒屋である。
酒屋の中にはカリフォルニアや西海岸にとどまらず、アメリカ全土のウイスキーが取り揃えられていた。中には5000ドルもするボトルもあったが、ミドルクラス向けの数十ドル程度の商品も多かった。そして、広い店内の一角に、JAPANESEと書かれたセクションを見た。そこで日本からやってきたウイスキーたちを発見した。響、大石、岩井、鳥取などの漢字が目に入った。私はウイスキーに詳しくないが、それでも響の存在は知っていた。価格を調べてみると良心的である。例えば、響・ハーモニーは日本での価格は16000円程度であり、バークレーの酒屋で110ドルで手に入るのは、輸入にかかる手数料を加味してもバークレーの価格帯は良心的で安価な値段である。
十分に黒光りするウイスキーボトルを眺めた後、試飲コーナーに顔を出した。そこでは店員のお兄さんが試飲の準備を整えつつあった。本日の試飲のテーマは店頭に書いてあった通り、”Japanese whiskey”である。本日は3本の日本生まれのウイスキーが振舞われていた。
ウイスキー試飲のラインナップ:
- (1) Ohishi 8 Year Old, Ex Sherry Cask
- (2) Ikikko Japan 8 Year Koji Whisky Sherry Cask: 米と、米麹からできた8年もののウイスキー。
- (3) Hakata 12 Year Old Sherry Cask Japanese Whisky: 大麦と麹で作られたウイスキー。シェリー樽で熟成されたらしい。
「博多」という商品が個人的に気になった。なぜなら、筆者は昔福岡に住んでいたからである。調べると、これは福岡県・篠栗にある光酒造 長者原蒸溜所 で作られているそう。なお、日本語の醸造所のホームページからは、バークレーの店で見つけたお酒(シェリー樽醸造&12年物)は発見できなかった。一方で、英語のWebサイトでは似たお酒を発見することができた。アメリカ向けのマーケットと日本のマーケットで違う流通経路が確立されているのだろう。
ウイスキーと呼んでいいものの基準は国それぞれ 試飲のお兄さんが述べたことで興味深かったことがある。それは、日本の法律上、ウイスキーと呼べるお酒のアルコールには何らかの基準(詳細は忘れた)があり、その基準を満たさないウイスキーは「ウイスキー」として販売できないのである。今回試飲したラインナップの中では、その意味で厳密には日本ではウイスキーとして販売できないものもあったそうだ。ドイツでいうところのビール純粋令(「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」と明確にビールの定義を定めた最古の法律。)と近しい雰囲気を感じた。
バークレーは興味深い街だったので、いくつか記事を書きたいと思います。次回までお楽しみに。