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人を巻き込み、インパクトのあることをできるようになるには?(4th Nov. 2023)

この記事はタイトルへの答えを提供するわけではないし、私自身にとってもこれから模索していきたい。

コラボの果実

最近は、大阪公立大学の医学部と情報系学生での共同プロジェクトについて、学生主体のチームからプレゼンをする機会があった。医療とAIという組み合わせはよくある話だけど、医療機関と情報系の人間が緊密に連携できるというのは、大阪公立大学の大きなメリットだと思う。大阪公立大学とは、大阪府立大学と大阪公立大学が統合してできた大学だ。発足したのは今年だから歴史が新しい。大阪公立大学ができたものの、私の所属は旧大阪府立大学で、かつドイツ人工知能研究センター(DFKI)のリサーチアシスタント、かつTU Kaiserslauternの交換留学生であるから、私の自己紹介はややこしい。それはさておき、大阪府立大学になかった医学部が、大阪市立大との統合でアクセスできるようになったのは素晴らしい果実だし、大阪という日本で有数の都市を舞台に、研究成果をますます社会にもたらすことができるようになるのはメリットが大きい。

このような出来事からは、人を巻き込むスキルというものの素晴らしさと、重要さを実感する。一匹狼のように成果を出すことには、どこかで限界があると感じる。特に、目標が複雑になるにつれ、やる気とスキルのある人たちと複数人で協力すると指数関数的なインパクトをもたらせるのではないだろうか。

人を巻き込むことで起きたコラボについて記事を書いているのは、私がそうしたコラボから大きなメリットを享受しているからである。例えば、自分が現在DFKIで研究留学ができているのは、私の研究室の黄瀬教授やDFKIのデンゲル教授が長年コラボをされてきたことが大きい。さらに、これからもDFKI Lab Japanが発足することで、さまざまなコラボが生まれる予感がする。一つ目は、地理的に離れた研究機関同士がつながること。もう二つ目は、産業界とアカデミアがつながること。そして、それらがつながることにより、社会の人が恩恵を受けること、などが考えられそうだ。そのどこか一部分にでも、学生のできる範囲でできることがあればいいなと感じる。それが、今回の大阪公立大学医学部との連携プロジェクトで達成したい私の個人的な目標である。

担当教官の黄瀬先生によって書かれた「コラボってみませんか?」という文章にも、DFKI Japan Labができる数十年も前のコラボについての言及がある。ここから月日が経ち、自分がドイツの地に留学することになったというのは、ある意味感慨深いものです。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiceissjournal/22/3/22_17/_pdf/-char/en

コラボの生みの親:人を巻き込むことに長けた人たち

マネージャやマネージメントをどうあるべきか、ということに最近興味を持っている。それは、公立大学の医療x AIのプロジェクトに関わり始めただけではなく、現在滞在中の人工知能研究センターでも尊敬するような人を動かすスキルを持った人たちを目の当たりにしたからである。大きな部門を動かせるような、人のマネージメントがうまい人は、長い目で社会にとてつもないインパクトをもたらしているように思える。彼らは、部下だけでなく、他分野のステークホルダーとの関わり方や、巻き込み方がとても上手で、職業だけでなく人間的にも尊敬できる人々である。

対等なコミュニケーションの有用さ

一方で、気づきもある。それは、人を巻き込むことが上手な人々は、対等なコミュニケーションをとっていることが多いように思える。(これは私の直感ですが、共感してもらえる人も多いのではないでしょうか?)日本などでみられる、「先輩と後輩」という儒教の影響の大きいマネジメントの手法は、人を巻き込むという点ではデメリットが大きいのではないか、ということだ。日本では先輩が、責めるようなきつめの口調で指導することが容認される文化がある。しかし、たかだか数年の経験の差は誤差のようなものだし、年の差に関わらず相手から学ぶべきことはあるはずだ。きつめの口調での指導は、人を動かすというよりは、やる気を削いでしまうこともあるのではないか。日本にいたときは、このような「先輩と後輩」のシステムにおける、後輩側の視点からの苦い思い出がある。

「先輩と後輩」システムの代替としては、年の差も関係なく、対等に接することが効果的だと感じる。後輩の人たちとも協力していく機会が増えるが、お互いがメリットを享受できるようにコミュニケーションの仕方を工夫していきたい。その時にベンチマークとして、身の回りの優れたマネージャーや、職務上はマネージャーではないが、人を動かすことが得意な人たちを観察して、言語的にも、ノンバーバルな面でも学べることを吸収していきたい。

この不確実な世にインパクトをもたらすこと

Entrepreneurship教育で著名なBabson Collegeの山川先生の授業を受ける機会があった。とても印象に残っているフレーズがある。「自分の世界や身近な人の世界を変えることから始めてみよう。そうすれば、すぐには無理でも、世界を変えられるかもしれない。」という趣旨のフレーズが印象に残っている。また、周りの人を巻き込むということが、資源の少ない「持たざる者」からのスタートであることが多いEntrepreneurshipでは重要だという。さまざまな人を巻き込むようなマネージャーたちの姿を目の当たりにすることが多く、研究活動も、ある意味広義のEntrepreneurshipである、という見方がようやく腑に落ちてきた気がする。これは、起業家のような考え方を人生で役立てていくというETA=Entrepreneurial Thoughts Actionという、Babson Collegeが提唱する考え方だそうだ。

私が研究者になるのか、開発者になるのか、research engineerになるのか、その他のことをやっているか、5年先の未来は不確かだし、心は揺れ動いて自分がどんな選択を取るのかも今は分からない。けれども、どの道に進もうと、広義のEntreprenurialなマインドで、人々を巻き込んで、インパクトのあることをやっていきたいと思う。