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ドイツ人の友達たちと本格的なピザを作った (5th Dec., 2022)

昨日は駐在員と、ドイツ人と友人が集まり、ピザを作った。あるドイツ人の友人は何年もピザを作る趣味を続けているそうだが、今年の初めに彼の家に本格的なキッチンが届いた。その時から、彼のピザへの情熱は頂点に達した。カイザースラウテルンの日本人のメンバーで、一緒に彼のピザを食べるのは3回目だ。

元来僕は他の人が作ってくれるのを食べるだけの人間だった。作るのは初めて。とは言ってもお膳立てがなされた状態でのピザ作りなのである。そう、ピザが趣味の友人が生地をあらかじめ準備してくれたのだ。

さて、生地づくりには、どんなプロセスがあるのだろう?聞いたところ、生地を準備するのには、いろんな種類の小麦と液体を適度な量と、適切なタイミングで混ぜ合わせるなどの、事前準備がたくさんらしい。オリーブオイルも入れたりするらしい。こうした生地を冷蔵庫で2日寝かせたりと、たくさんの労力がピザに刻み込まれているようだ。最終的なアウトプット、すなわち焼けたピザにはその苦労を感じることはできない。世の中には、知られていないが大事なことがあるようだ。もちろん、ピザはしゃべらないのではあるが、ピザの声が聞こえた気がした。

さて、我々一行は、すでに用意された生地をこねたが、これも奥が深い。ボウルから出てきた巨大なもちもち生地は、新生児のお肌のような質感だ。それを机の上に取り出すのだ。おっと、取り出す前にオリーブオイルをひかなければいけない。そのあと、200グラムずつの塊を作って、グルテンの層を外側に引き伸ばす。グルテンはモチモチの生地をモチモチたらしめる物質である。コネ方は2通り教えてもらったが、手で外側の層を肉まんのように全体に広げる感じだ。イメージとしては、土下座をする時に似ている。土下座の時の腕は斜めに手を向かい合わせていると思う。それを地面(=ピザの場合は机の上と考えて)に対して手のひらが垂直に交わるように、手のひらを腕を軸にして回転するのだ。その状態で丸いピザ生地の塊を手前に引き込んでいく。土下座しながら後ずさりする要領だまあ、文字で伝えるのは難しいので、説明を諦めることとする。

さて、こねられたまん丸のモチモチ生地たちは、プラスチックの箱に入れられて数時間発酵させる。この間にしばし談笑を楽しむ、これもピザ作りの醍醐味なのであろう。生地と生地をつなげる役割のグルテンが、人間と人間もつなげてくれるのだ。ありがとう、グルテン君。

時間が経つと、記事がまん丸になってきた。そこで、我々は少々粗めの小麦粉を机にまぶす。これを有効活用しつつ、生地を薄いカードのようなもので引き伸ばすのだ。初めにクレスト(ピザの端っこ。いわゆるピザの耳のこと)を作る。その後、引き伸ばす時に、生地を掴んで重力で伸ばすことがある。ここで生地がグニャーンと伸びてしまうが、グルテンのおかげで千切れることはない。なんという伸縮性、これはまさに、「柔よく剛を制す」を体現している。焼かれる前のピザに、私は柔道の極意を垣間見た。

さて、丸く薄くなったピザ生地にはソースとトッピングをかける。トマトソースを薄く塗った後、一旦オーブンに入れて、硬くなってから取り出してトッピングをかける。まず、ハムとパプリカの雨を降らせる。それは満遍なく、かつ大胆に。その様子は冬のドイツのあられのごとく。そして、バジルソースの雨を降らせる。さっきまで不毛地帯だったピザ生地が、恵みの雨に光悦の表情を浮かべた。そこに間髪入れず、チーズを投下していく。その様子は、まるで予定調和だ。

こうしたトッピングの順番や内容は、作る人の自由であり、個性を反映するようだ。トッピングだけでも、「組合せ爆発」が起きてしまう。(=その組み合わせが人間の現在の技術で計算するには、とてつもない時間がかかってしまうこと)つまり、ピザは有限だし、我々の現在のコンピュータの演算能力でも最適なピザを得ることはできない。ピザをどう作るかは、あなた次第なのだ。だからこそ、目の前のピザを愛おしむ、ピザと「この瞬間」を過ごすのだ。とはいうものの、ピザづくりにもベストプラクティスが存在し、YouTubeのピザづくり動画などで学ぶことができるらしい。ピザ作りが趣味のドイツ人の友人は、YouTubeと実践でピザ作りを習得した。それはまさに、self-taughtなピザ職人ともいうべきであろう。

なんだか話が脱線したのでピザの話に戻そう。トッピングが載せられたピザ生地は、アツアツのオーブンに再び入れられていく運命だ。ピザをチリトリのようなものですくってオーブンに入れるのだがこれが難しい。まず、すくう時に慣性の法則でサッととらないといけないし、それをオーブン内のピザストーンに置くのも難しい。手間にはみ出してもいけないし、奥にはみ出してもいけない。

数分間ピザが焼かれた後、オーブンからピザを慎重に取り出す。部屋が熱気に包まれる。この熱気はオーブンからくるものと、我々のピザを待ちきれない、という思いの両方からくるものなのだろう。これを特殊な包丁で切り、完成だ。たくさんの労力をかけた後にようやく完成した。そのピザの味は?もちろん、最高だった。